- フルラインが出たり、出なかったり…
- 長めのリーダーがターンできたり、できなかったり…
フライキャスティングで、こんな悩みはありませんでしょうか。
このような現象がある場合、たった一つの重要なことが、たまたまできたり、できなかったりしていることがほとんどです。
それは「ロッドを振り始めるタイミングを正確にとらえる」という事です。
もちろんそれだけがすべてではありませんが、正確にタイミングをとらえることができるかできないかが、フライキャスティングの成否を分けるといっても過言でわありません。
この記事では、ロッドを振るタイミングについて解説します。
上記の悩みを抱えている場合、タイミングを意識できるようになるだけで解決する可能性があります。
キャスティングのメカニズム
ロッドを振り始めるタイミングについて説明する前に、キャスティングのメカニズムを簡単におさらいしておきます。
ルアーや投げ釣りなどのキャスティングでは、ロッドを振る力+曲がったロッドの復元力をルアーやオモリに伝えることによって投げていますが、フライキャスティングにおいてもこの原理は同じです。
しかしながら、フライキャスティングでは、ロッドの復元力を得るために考えなければならないことがあります。それは、フライフィッシングがラインの重さを利用してキャストすることが大きく関係しています。
ルアーなどのキャスティングとの違いを見てみましょう。
ルアーなどのキャスティング
上図のように、ロッドを後ろに振り(バックキャスト)、止めると同時にルアーやオモリの慣性で竿が大きく曲がります。
止めてからほぼタイムラグがなくロッドが曲がりますので、そのまま前に振るだけで、ロッドの復元力をキャスティングに生かすことができます。
フライキャスティング
フライフィッシングは、フライライン自体の重さで投げるので、フライラインの挙動を考慮する必要があります。
フライキャスティングの場合、バックキャストでロッドを止めても、すぐにロッドが曲がることはありません。厳密にはロッドの自重の惰性で曲がることはありますが、この曲がりの反発力はキャスティングにはほとんど貢献しません。
上図のように、ロッドを振ったエネルギーがフライラインに伝わり、ロッドを止めることでループを形成し、そのループが後方に展開していきます。
ループが展開しきったところで、エネルギーが行き場を失い、ロッドティップを引っ張るのでロッドが曲がります。
この瞬間に前に振ることでロッドが大きく曲がり、その復元力を最大限に活用できることになります。
フォルスキャストで、フォアーからバックに振り始める場合も、上図が逆になるだけで同じです。
ルアーとフライのキャスティングの違い
フライキャスティング全体ではルアーなどとの違いは多くありますが、キャスティングの原理だけをみると大差ない事がわかりました。
- ルアーもフライも曲がったロッドの復元力を利用する
- ロッドを振るタイミングだけが違う
ルアーなどは、タイムラグがないので常に一定のリズムでキャストできます。感覚的にも素手で物を投げるリズムに近く、技術の習得に時間がかかりません。
一方、フライキャスティングはバックキャストを止めてから、ループ展開のタイムラグを待ち、正確なタイミングをとらえロッドを振り始める必要があります。
ところが、フライ歴が長い人でもこれができてない人(私を含め…)が多くいます。
渓流などで短いラインであれば、ロッドを力まかせに振っていても、なんとか釣りができてしまいます。
しかし、正確なタイミングをとらえることを意識すると、少しの力で信じられないぐらいの飛距離やターン性能を得ることができます。
次項ではこの「正確なタイミングをとらえる」について掘り下げてみます。
ロッドを振る正確なタイミングとは
ロッドを振り始めるタイミング
既におわかりと思いますが、ロッドを振り始める理想的なタイミングは、ループが展開しきった瞬間ということになります。
フォルスキャストの場合も、最終的に投げる(シュート)の場合も、常に正確なタイミングで振り始めることで、少ない力でロッドの反発力を最大限に生かした、効率的でパワフルなキャスティングとなります。
ループが展開する前に振り始めてしまうと、ロッドの反発力はほぼ生かせず、ラインに充分なエネルギーが伝わりません。これは、ヨーヨーで紐が伸び切っていないのに、手を上にシャクっている状態に似ています。
冒頭にあげた問題(フルラインキャストやロングリーダー展開の成否)は、たまたまタイミングが合っているときは良い感じで、タイミングが合わなくなってくると飛ばなくなっている可能性が高いのです。
つまり、振り始めのタイミングを正確にとらえることを意識的に行うことで、課題が改善されることになります。
(他に致命的な問題がなければですが…)
タイミングは一定ではない
ループが展開するまでのタイミングは、毎回変わり一定ではありません。
同じタックルを使っていても、ラインの長さ、ラインのスピード、風の有無などで変わってきます。
毎回変わるベストタイミングを、正確にとらえるにはどうしたらいいのでしょうか?
次項では、その方法を説明します。
正確なタイミングのとらえ方
リズムやテンポではない
初心者向けのフライキャスティングの説明で、「一定のリズムで…」、「メトロノームのように…」といった情報を散見します。
ここまで読んでいただいた方は、それが誤りであることをご理解いただけると思います。
目視による確認も現実的ではない
フォルスキャストのたびに、目視でループを見届けタイミングをとらえるのは、首が忙しく現実的ではありません。
正確な位置に狙いを定めフライを投げたいときに、いちいち後ろを向いている場合ではありません。
初めのうちは目視でも構わないと思うのですが、最終的にはラインを見ずにタイミングをとらえる術を身につけましょう。
荷重変化を手元で感じとるのが理想
ループが展開しロッドが曲がるときに、ロッドが引っ張られる感覚が手元に伝わってきます。
正確なタイミングをとらえる最も現実的な方法は、ロッドを通して手元に伝わる荷重変化を感じ取ることです。
フォアーもバックも、手元で感じることができるようになると、ラインを見ずに正確なタイミングでのキャストが可能となります。
視線を狙いたいポイントやライズなどに集中することができ、ナイターなど視界が制約を受ける場合もメリットがあります。
(※ 当然ながら、安全確認のための最低限の後方確認はしましょう)
荷重変化はわかりにくい
フライラインのAFTA規格で定めている、3番のラインの先端9mの重さは6.5gです。
6.5gというのはルアーでも軽い部類ですが、これが塊状ではなく、ラインという動揺流転の状態であるわけです。
何が言いたいかというと、手元に伝わる荷重変化は、ルアーなどに比べ非常にわかり難いという事です。
高番手の重いラインであれば明確に感じることができますが、低番手ではライン自体が軽く、手元にくる荷重変化も小さいので、感じるために訓練が必要となります。
また、ロッドティップから出ているラインの長さによっても、ラインの重さが変わるため、感じ方が大きく変わります。
ロッドを止めて待っていられない
くどいようですが、ロッドを止めてから、ループが展開するまでロッドティップを止めて待っている必要があります。文章で書くと簡単そうに思えますが、これがなかなか難しいのです。
ループ展開中にロッドティップをへたに動かしてしまうと、動かし方によっては、ループ形状が乱れ、荷重変化を感じることも難しくなってしまいます。
固定して待っているからロッドが曲がるのであって、特別な理由がない場合は、止めてひたすらその時を待ちましょう。
待ち過ぎてもダメ
ループが展開した後にそのまま止め続けていると、ロッドティップがお辞儀をした後すぐにロッドが復元し、ラインは下へ落ちてしまいます。
最大限の反発力を得るには、曲がるその瞬間をとらえる必要があります。
タイミングをとらえ続けることが大事
フォルスキャストで、ひとつ前の振り始めが正確なタイミングをとらえていれば、ループにパワーが乗っているので、次の展開時の荷重変化が大きく(強く)なり、タイミングも把握しやすくなります。
つまり、常に正確なタイミングをとらえ続けることは、キャスティング全体に好循環をもたらします。
逆に言うと、一度でもミスると、立て直しが難しくなってしまいます。
タイミングをとらえることは重要だが…(まとめ)
ロッドの振り始めのタイミングをとらえることの重要性を説明してきましたが、今回の内容はごく基本的な内容です。
また、ロッドの振り方、リストの使い方など、重要なことは他にもあり、どれが不足してもフライキャスティングは上手くいきません。
フライキャスティングで下記に興味がある方は、専門家の個人レッスンを受けることをお奨めします。
- ループ展開時の荷重変化を感じやすくする方法
- ループ展開のタイミングを積極的にコントロールする方法
- これらを実戦でどう生かすか
- そもそもタイミング以外に問題はないか
偉そうなことを説明してきましたが、今回の記事のテーマは私自身の現在の課題であり、私の師匠である平岩さんに指摘されて改善中の内容です。
このような事は、自分自身で気付くのは至難の業であり、また、できているつもりでもできてなかったりします。
興味がある方、さらに上を目指したい方は、レッスンを受けてみることをお奨めします。
フライスペース・Kai-To(カイト)
代表:平岩 豊嗣(ひらいわ とよじ)
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