【フライキャスティング】細いループ(狭いループ)はどこがダメなのか

フライフィッシング

フライキャスティングにおいて、幅が細く狭いループ(「ナローループ」または「タイトループ」)は理想的であるとされています。
細いループは、直進性に優れ、空気抵抗が少なく、効率的な印象があります。
ロッドティップのすぐ上をラインが通過するような細いループは一見、美しく、無駄がない理想的なループに見えます。(実際にはティップの斜め下あたりを通過しているのがほとんどですが、、、)
しかし、本当にそうでしょうか?
かつての私もそうでしたが、ループを細くすればするほど、

  • 空気抵抗が減り飛距離が出る。
  • 狭い空間へフライを送り込むことができる

このような考えに取り憑かれ、ループを細くするために膨大な練習をしていました。
しかし、極端に細くしたループが、実戦で日の目を見ることはありません
なぜなら、極端に細くするために小細工したループは、パワー不足で飛距離が出ないばかりか、ターン性能がなく、狙ったところへフライを届けることができないからです
この記事では、細いループの弊害と、理想的なループについて説明します。

細いループを「目的」にしてはいけない

細いループは、直進性に優れ空気抵抗が少なくなり、飛距離も出ます。これはまぎれもない事実です。
しかし、その「細さ」には限度があります。
理想的なループの幅は、ロッドの特性や、ロッドから出ているラインの長さによって変わります。
ロッドを理想的なタイミングで真っすぐ正しく振り、例えばラインが13mの時のループ幅が1mであったなら、そのロッドで13mのラインでのループの理想的な幅は1mという事になります(あたりまえですが、、、)。
動画サイトやイベントなどで見た細いループが素敵だったからといって、この1mを50cmにする努力はしない方が良いという事です。
ループの幅は、正しいキャストをした「結果」であり、ループの細さそのものを「目的」にしてはいけません
見かけ上、ループを細くする小細工はいくつかありますが、そのテクニックのほとんどが、ラインに伝えるパワーやスピードを下げる方向に働きます
次項ではその点について説明します。

細いループのどこがダメなのか

ループのメカニズム

細過ぎるループのデメリットを説明する前に、ループのメカニズムについて触れておきます

ループのメカニズム

上図のように、ティップの軌跡の頂点と、ロッドを止めた(あるいは大きく減速をした)点の高さの差がループの幅となります。
振り角を大きくすればループも広くなり、振り角を少なくすればループが狭くなるのがイメージできると思います。
近距離(短いライン)の場合は振り幅は少なくループ幅も狭くなります。
遠距離(長いライン)の場合は振り幅も大きくする必要があり、必然的にループ幅も広めになっていきます。
この原理原則を無視し、長いラインでのループも必要以上に細さを求めてしまうのは良くありません。
振りのストロークが大きい状態で細いループを作るには、難易度が高い小細工を習得する必要がありますが、その習得の労力が釣果につながることはありません。
ある程度の長さのラインで細いループを作る小細工にはどんなものがあり、何がダメなのかを解説していきま。

細いループを作るには

ショートストローク

ラインが長くなればなるほどライン自体も重くなり、投げる(またはターンさせる)のに多くのスピードやパワーが必要となります。
車が10mの距離で100km/hに到達できないように、フライキャスティングにおいても、必要なスピードやパワーが増えるほど、当然ながら必要なストロークも長くなります。
前述したとおり、ストロークが短い方がティップの高低差がなく、ループも細くなります。とはいえ、ギリギリまでストロークを短くしてしまうと、空気抵抗のメリット以上に、そもそもパワーののないループになってしまい本末転倒となります。

グリップを下げる

標準的な振り方をすると、ロッドティップは扇状の軌跡となります。この扇形の軌跡を相殺するように、グリップを下げ皿形にグリップを移動させるように振るというテクニックを見たことがあります。
フライキャスティングは、ロッドの反発力を最大限活用するのが重要であるというのは別の記事でお伝えしました。
ところが、ロッドを振って曲げようとしている最中に、その支点となるグリップを下げるという行為は、ロッドの曲がりが抑えられる方向に働き結果として反発力も弱くなってしまいます
ロッドティップの軌跡にこだわるあまり、わざわざパワーをロスさせるのはよろしくありません

リストを使わない

ティップを直線的に移動させたいという意図から、リスト(手首)をほぼ使わず、グリップを直線的に前後運動させるだけというのも良くありません。
同じストロークでロッドティップのスピードを得るのに、グリップの前後運動のみで振るのと、リストの開閉と腕の運動を併用して振った場合で、どちらが簡単で効率的であるかは明白です。(正しいリストワークである必要はあるのですが、、、)
こぶしの前後運動だけで充分な長さのラインを投げれるのであれば、直ちにこの記事を読むのをやめ、ボクシングの世界チャンピオンを目指すべきです。

細いループのデメリット

既にお分かりかと思いますが、細いループのデメリットをまとめます。

パワーがない

細過ぎるループがパワーがないのは、これまでの説明でご理解いただけたと思います。
小細工するより、正しくズバッと振った方が効率的でパワーロスがないので、少々広いループになったとしても問題ないのです。
細くすればするほど遠投性に優れているのであれば、キャスティング競技では皆が細いループを投げているはずですが、実際はそうはなっていません。

ターン性能が弱い

小難しい物理的な説明は省略しますが、ワイドループの方がターン性能にが優れています
ただ、ワイド過ぎると飛距離が出ませんので、その時々に応じた適切なループ幅をチョイスします。
つまり、ある程度のループ幅のコントロールは身に付けた方が良いことになります。
とはいえ、極端に細いループを選択する実戦でのシーンが、私には思いつきません。
大きなフライ、重いフライ、長いリーダとティペット、これらをしっかりターンさせポイントに届けようとすると、そもそも細いループという選択肢は無いのです。

正確なキャストが困難

別の記事で述べましたが、正確な位置にフライを投げる最も理想的な方法は、ハイライン投法により顔の真正面で振ることです。
特に理由もないのに初めからロッドをやや倒し、ティップすれすれにラインを通すキャスティングをして悦に入っているのを見かけますが、これは重いシンキングラインや重いフライを投げる時、もしくは横風を受けたときに仕方なく行う妥協策であり、無風快晴の芝生の上でフローティングラインでフライも付けずに必死に練習するものではありません。
ラインが高い位置を飛行する(つまりハイライン)練習をし習得しておけば、低いラインなどいつでも投げれるようになるのです。

トラブルが多い

細すぎるループは、常にトラブルと紙一重です。
キャスト中に微風に煽られただけでロッドや人体にラインが当たったり、ラインやティペットが絡んだりします。
実戦ではとても使い物になりません。

初心者の方へ伝えたいこと

情報が偏っている

この記事を執筆するにあたり、ネット検索等で情報収集してみましたが、ループの細さの有効性を説明する情報は多く見られましたが、細過ぎることの弊害を伝える情報はほぼ見受けられませんでした。それどころか、いかに細いループを投げることができるかを誇るかのような情報すらあるほどです。
かつての私もそうでしたが、独学でキャスティングを学んでいると、何が正しいのかを見極めることが難しい状況であると言えます。

本質を見失わない

細すぎるループの弊害について説明してきました。しかしこのような事は世間に溢れています。
例えば車の改造で、車高を下げるというのがあります。
特定のコースでタイムを出すために、トライ&エラーを繰り返した「結果」の車高と、見た目だけのドレスアップ系で、ただ車高を下げてツライチに合わせる事だけを「目的」とした車があります。
素人目にはどちらも同じように見えますが、前者は実戦的であるのに対し、後者はタイムが出ないだけでなく、国道すらまっすぐ走ることもできません。
フライフィッシングにおけるフライキャスティングの本質とは、フライを理想的な形でポイントに届けることです。
芝生の上で芸術点を取ることではありません。
パワーと精度がなく、ターン性能に劣る、トラブルと紙一重のわりに練習の労力が必要な細いループ、釣果に結びつかないばかりか、せっかくのチャンスを逃してしまう事さえあります
実戦で出番のないループの練習に時間を割いているのなら、一刻も早く効率的なキャスティング練習に切り替えましょう。
フライを続けていると、「細ループマウント」を取ってくる人が稀にいらっしゃいます。
そのような人にいちいち惑わされることなく、自分が釣るための練習を淡々としていきましょう。

本物を見てみよう

これまでの説明で、「真っすぐ正しく振り」とか、「正しいリストワーク」とサラッと書いてきましたが、どのようなイメージでしょうか?
また、自分のロッドでの理想的なループはどのようなものか、イメージできていますでしょうか。
理想形が曖昧なままひたすら練習するのは、軽い運動にしかなりません。
これらを最速かつ低コストで解決するのは、エキスパートのキャスティングを実際に見て、教えを受けることです。
私は今、平岩豊嗣さんの教えを受けていますが、もっと早く習っておけばよかったと後悔しています。
基本~実戦的なキャスティングを教えていただけるのはもちろん、個々の欠点や改善点を丁寧に教えていただけます
キャスティングに不安がある方は、ぜひ相談してみることをおすすめします。

フライスペース・Kai-To(カイト)
代表:平岩 豊嗣(ひらいわ とよじ)
〒444-0938
愛知県岡崎市昭和町堀上7-1
TEL:0564-33-6507

営業:木、金、土、日(14:00~19:00) 
  ※第2、4日曜はお休み

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