「ハイスピード・ハイライン」(HS/HL)というフライキャスティングをご存じでしょうか。
ネット検索をしてもあいまいな情報が多く、今でもその実態があまり知られていない印象を受けます。
私は幸運にもHS/HLの達人である平岩豊嗣さんのお店が地元にありましたので、正しい情報に触れることができました。(実践できているかは別ですが…)
実際に釣りをご一緒させていただくと、HS/HLをベースとしたキャスティングを駆使し、バシバシ釣っていきます。
そんな姿を目の当たりにし、HS/HLこそが自分が目指すべきキャスティングであると確信しました。
以前の記事でも書きましたが、私は長い間、独学でのキャスティング習得を目指していました。
雑誌や書物、動画やイベントなどでいろいろなキャスティングを見てきた中で、なぜHS/HLに行き着いたのか。
この記事では、
- HS/HLとは
- HS/HLのメリットデ/メリット
について説明します。
ハイスピードハイライン(HS/HL)キャスティングとは
ハイスピードとは
「ハイスピード」とは、ラインスピードを速くするためのテクニックのこと…ではありません。
ハイラインを実現するためには、ロッドティップのパワーが必要となります。
ラインを高く上げるために必要となる、反発スピードの速いティップを備えたロッドの性質のことを指し「ハイスピード」と言っています。
つまり、この性質を持つロッドを入手した瞬間に、「ハイスピード」については達成したことになります。おめでとうございます。
ロッドの性質の詳細については後述します。
ハイラインとは
「ハイライン」はわかりやすいかもしれません。
ハイライン投法をすることで、フォワードもバックも頭のはるか上空をライン(フライ)が通過します。

とはいえ、実際の釣り場(特に渓流)では、頭上に樹木があることが多いのも事実です。
ハイライン投法をマスターしたところで、ほとんど出番がないのでは?と思えてきます。
それでもハイライン投法は実戦的であり、習得するメリットがあるのです。
※上記のように、「ハイスピード」とはロッドの性質であるため、この記事では技術そのものの事を「ハイライン投法」として説明します。
次項ではハイライン投法を習得するメリットの一部を紹介します。
ハイスピードハイラインのメリット
正確なキャスティングが可能
ダーツ、ビリヤード、アーチェリー…精度が要求される種目は、例外なく顔の真正面で構えて狙いをつけます。目線と投げたい物の延長線上に、狙う標的が来るように構えるのが当たり前です。
フライフィッシングも同じく精度が要求されるにもかかわらず、体の横に逃がしてロッドを振る人がほとんどです。
普通(?)のキャスティングで目線上を振ると、身体にラインやフライが当たる恐れがあります。
しかしハイライン投法をマスターしていれば、頭のはるか上空をライン(フライ)が通ります。
つまり目線の真正面でロッドを振ることができ、正確に狙いをつけることができます。
頭上に障害物がある場合でも、可能な限り体の芯に近い位置でロッドを振ることで、誤差を最小限にできます。
体の芯に近い位置でロッドを振るメリットが、もうひとつあります。
フライキャスティングにおいてロッドを真っすぐ振ることは、当たり前すぎるほど重要なことです。
しかし、振る位置が体の芯から離れれば離れるほど、人間の手は円運動をしたくなります。
ハイライン投法を練習することで、体の芯に近いところで振る習慣が身に付きますので、真っすぐ振るために円運動を補正する必要がなく、複雑な微調整動作をする必要がありません。
高い位置からフライを落とすことができる
川のドライフライで、単調な流れの川の上流に向けキャストした場合を考えます。

上図のCは問題外として、AとBではどうでしょうか。
どちらもフライから着水する理想的なアプローチですが、ライン(ティペット)が着水した瞬間からフライの動きに制約が始まる(ドラッグが掛かる)となると、少しでも高い位置からフライ落とした方が良いことは間違いありません。
その差は0.1秒程度かもしれません。
しかし経験者ほど0.1秒でも長くナチュラルドリフトができることの重要性を理解しているものです。
また、高くから狙えるという事は、遠くから狙えるという事でもあります。
大物ほど賢く、警戒心が強いものです。警戒心が強いからこそ、大物になれたはずです。
こんな優秀な魚は、こちらの気配を察知させないほど遠くから狙い、仕留めたいものです。
ドライフライに限らず、ウェットフライやストリーマーでも、しっかりラインをターンさせ、フライから着水させることは重要です。
着水と同時にフライが魚を魅了する姿勢となれば、魚への違和感も最低限となりヒットのチャンスが増えます。

すでに述べたように、頭上の障害物などで常に高くから狙えないことが多いのも事実です。
それでも可能な限り「A」を目指し、0.1秒のチャンスを積み上げることができるのが、ただの上級者と達人の違いであり、それを実現するためのハイライン投法であると言えます。
普段からハイライン投法を練習している人が、状況によりロッドを倒して振ることは容易にできます。
しかし、普段からロッドをやや倒し、ティップの横をラインが通過するようなキャスティングしか練習していない人は、いくらフルラインを投げることができたとて、いつまでたっても0.1秒に泣くことになります。
障害物回避
ラインが高い位置を飛行しますので、当然ながら背後の草などの障害物に引っかかることも少なくなります。
ウェーディングをすると、さらに地面(水面)が迫りますので、ハイラインが有利なのは言うまでもありません。
自由度が高い
「HS/HLは窮屈で不自由なキャスティング」というのを聞いたことがあります。
ハイライン投法では、グリップそのものも、できるだけ高い位置で振ることが推奨されています。
理想は腕をまっすぐ上に伸ばし振ること…となるのですが、現実的にそれを続けることはできませんので、自身の体の許す範囲で可能な高さを目指すことになります。
目安としては、リール(グリップ)が耳より上あたりで振るイメージです。
私もその教えを受けたとき、はじめはとても窮屈ですぐに疲れてしまいました。
しかし、ある程度の練習をすれば、誰でも普通にできるようになります。
そして、これができるようになってくると、格段に自由度が増してきます。
例えば、利き手の反対側のサイドキャスト(バックハンドキャスト)。
普通の高さ(肩や胸程度)で振る事しかできない人は、自分の体が邪魔になりストロークを十分に確保できません。
グリップを高い位置で振る練習を積んでいると、頭の上で振ることができ、ストロークを十分に確保できます。

「フライは左利きが有利」というのを聞いたことがありますでしょうか。
左利きでないと狙いにくいポイントがあり、左利きは少数派なのでライバルが少なく有利というのは実際にあると思います。
しかし、頭の上で振るバックハンドキャストをマスターすれば、利き手など関係なくなります。
つまり、左利きのメリットをも享受できてしまうのです。
また、高い位置で振ることに慣れた人が低い位置で振ることは余裕でできますが、その逆は難しいという事実。
こんなに自由度が高いことがあるでしょうか?
ハイスピードハイラインのデメリット
ハイスピード特性を備えたロッドが少ない
ハイライン投法を実現するには、パラボリックアクションのロッドが必要となります。
実は私は最近のロッドの商品知識がないのですが、プログレッシブ(ファースト)アクションのロッドが主流ではないでしょうか。
プログレッシブアクションのロッドでは、残念ながらハイライン投法を実現することはできません。
また、一見パラボリックアクションであっても、軽さを追求した薄巻きブランクスのロッドだと、ラインが短い(軽い)うちはいいですが、ラインを伸ばすと重さに負けラインが上がらなくなってきます。
習得が困難
冒頭にも書きましたが、幸いにも私は地元にハイライン投法の達人がおられましたので、がっつり習っておりますが、独学で習得するのはほぼ無理です。
しかしながら、初心者やこれからフライを始める入門者は、ある意味有利であると言えます。
その理由を別の記事で書いておりますので、そちらを参照してください。
本物のハイライン投法を習得するなら
いかがでしょうか。
今回の説明は、ハイライン投法の利点のほんの一部にすぎません。
「フルラインを出す」ことに取り憑かれていないでしょうか?
「ループの形状だけを真似する」努力に、時間をかけていないでしょうか?
本物のハイライン投法を習得すれば、フルラインも美しいループも後から付いてきます。
無駄な努力は一旦やめて、何のためのキャスティングかを自問してみましょう。
フライスペース・Kai-To(カイト)
代表:平岩 豊嗣(ひらいわ とよじ)
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