フライフィッシングのティペットは何を基準に選んでいますでしょうか。
フライのティペット用ラインとして各メーカーから発売されていますが、普通のラインと何が違うのでしょうか?
フライフィッシングにおいてティペットは、フライそのものと同じくらい重要であると考えています。
フライまたは魚に一番近いラインであるため、釣果に影響を与えやすい部分でありながら、フライの仕掛けの中で一番弱い部分でもあります。
バラシや合わせ切れが多発する場合、ティペットの選択やセッティングに原因がある場合も考えられます。
ティペットの選択やセッティングの試行錯誤そのものが、フライフィッシングの楽しみのひとつです。
私自身も、ナイロン、フロロカーボン、他ジャンルのラインの流用など試行錯誤してきました。
この記事では、フライフィッシングのティペットの基本的な考え方について説明します。
フライのティペットとは
ティペットとは
ティペットとは、フライを直接結ぶラインで、ラインシステム(仕掛け)の中で一番細い部分になります。
テーパーリーダーの細い側にもストレート部分があり、ここもティペットと呼ばれています。
テーパーリーダーのティペット部分の長さが足らない場合や、結び替えやロストなどにより欠損したティペットを補うため、ティペット単体でも売られています。
こちらは他ジャンルの普通のラインとほぼ同じですので、後述する条件に見合うものであれば、他ジャンルのラインを流用することができます。
ティペットの役割
ティペットの役割は下記となりますが、共通している役割は「魚に違和感を与えない」という事になります。
- 太くて存在感があるラインやテーパーリーダーを、フライから離す。
- ドライフライにおいては、ナチュラルドリフト(自然に流す)を実現させる。
- 魚が口にしたときに違和感を与えない。
ティペットの規格
ティペットの太さ(テーパーリーダーの細い側含む)は、X(エックス)という単位で表記します。
最近ではルアーなどのラインはポンド(lb)の方を主体で表記していますが、フライのティペットは、X表記による太さがメインで、補足的にポンドや号数が記載されています。
太さと号数
X | 号数 | およその太さ(mm) |
---|---|---|
0X | 3 | 0.28 |
1X | 2.5 | 0.26 |
2X | 2 | 0.23 |
3X | 1.5 | 0.20 |
4X | 1 | 0.16 |
5X | 0.8 | 0.14 |
6X | 0.6 | 0.12 |
7X | 0.4 | 0.10 |
8X | 0.3 | 0.09 |
他ジャンルの釣り糸をティペットに流用する場合は、号数を参考にしてください。
ティペットに求められる性能
他ジャンルのライン同様、強度や品質が求められるのは当然ですが、フライフィッシングのティペットとして特に求められる性能について説明します。
フィッシングのティペットとして売られているものは、下記の性能に特化したラインであると言えます。
しなやかさ
ナチュラルドリフト
ドライフライの場合は、フライを自然に流す(ナチュラルドリフト)ことが重要です。
複雑な流れにもしっかり追従し、フライを違和感なく流すために、ティペットがしなやかであることが求められます。
渓流を釣り上がっていた時に、不注意で結んでいないフライを落としてしまったことがあります。
何も結んでいないフライは完全なナチュラルドリフトで流下し、これまでさんざんフライを流しまくって無反応だったポイントで魚が飛びついたことがありました。
魚には申し訳ない事をしましたが、ナチュラルドリフトの重要性を感じた出来事でした。
ティペットに結んだフライが、何も結んでいないフライと同等に流すことは不可能ですが、そこに極限まで近づける事が、ドライフライの究極のテーマです。
フッキング性能
ティペットがしなやかである方が、魚の口の中のフライ(フック)の動きの違和感がなく、かつフッキング動作に追従しやすいと言えます。
ティペットが硬く張りがあると、口の中でのフックの動きが制約を受け、フッキングという点では不利となります。
ルアーなどのようにフック周辺に重量物がなく、軽いフライの場合は、その傾向はより顕著になってしまいます。
ほどよい張り
ティペット自体に程よい張りがあった方が、正確なキャスティングを行いやすくなります。
前述したとおり、太くて存在感のあるフライラインから距離を離してフライを落とすことも、ある程度の張りがあった方が容易にできます。
お気づきかと思いますが、「しなやかさ」と「ほどよい張り」は、相反する性能です。
相反する性能から、状況に応じて妥協点を見出しセッティングすることになります。
次項では、ティペットのセッティングについて説明します。
ティペットのセッティング
ティペットのセッティングは、太さと長さのバランスによって調整し決定します。
太さ
基本的には、フライのサイズ感(大きさ、重さ、空気抵抗など)にあわせて、ティペットの太さを選択します。
ドライフライの場合、下記のサイズを基本とし、ポイントや魚の状態を加味して決定します。
X | フライサイズ |
---|---|
0X | #6 |
1X | #8 |
2X | #10 |
3X | #12 |
4X | #14 |
5X | #16 |
6X | #18 |
7X | #20 |
長さ
ティペットの長さについては、状況が許す限り長い方が有利にゲームを展開できます。
「状況が許す」とは下記の事を指します。
キャスティングのスキル
ティペットが長くなればなるほど、正確にコントロールするためのキャスティングのスキルが必要となりなす。
自身のキャスティング技術で、コントロール可能な長さであることが重要です。
ポイントの規模
藪沢や源流のような狭いポイントで、長いティペットを振り回すことはできません。
ポイントの規模で長さを調整します。
風
ティペットが長くなればなるほど、風の影響を受けやすくなります。
フライのサイズ感
大きく、重く、空気抵抗が大きいフライを、長いティペットでコントロールするのは困難です。
以上を踏まえ、フライのプレゼンテーションに影響しない範囲で長さを決定します。
逆に、ティペットが短すぎると、下記の弊害があります。
- ターンが強くなり、静かな着水(プレゼンテーション)が困難になる。
- ナチュラルドリフトできる距離が短くなってしまう。
ロングティペットとゲーム性
極端にティペットを長くし、フライ近辺のティペットをわざとターンさせずにクシャクシャに落とし、ナチュラルドリフトの時間を稼ぐ、いわゆる「ロングティペット」が主流のようです。
私個人の考えでは、極端なロングティペットは、消極的な戦略であり、結果的にゲームとしての達成感(「釣った」感)が薄まってしまうような感覚があります。
もちろん、このスタイルを否定するものではありませんが、私の求めるゲーム性とは少し違うという事です。
キャスティング技術を高め、フライを完全にコントロールして「釣った」一匹は、満足度が高いですし、ミスった場合でも、更なる技術向上のモチベーションになります。
私の場合ですが、状況により60cm~1m程度の長さで使う(テーパー部除く)ことがほとんどです。
ナイロンとフロロカーボン
主要国内メーカーからは、フロロカーボンとナイロンのティペットが発売されています。
私も色々と使い比べましたが、結論として、フライフィッシングとフロロカーボンは相性が悪いと思います。
フロロカーボンの記事で、ナイロンとと違いを書いています。
要約すると、
- フロロは比重が大きく水に沈むが、ナイロンはほぼ沈まない。
- フロロは伸びが少なく感度が良いが、ナイロンはやや伸びる。
- ナイロンはしなやかで、フロロは硬い。
- ナイロンは吸水するが、フロロは吸水しない(吸水による劣化が少ない)。
- フロロは屈折率が低く、魚から見えづらいと思われる。
- 直線強度、結束強度ともにナイロンが強い。
- フロロが高価で、ナイロンは安価。
ということになります。
フロロは強くない
フロロの方が、強度がある印象ですが、実際は逆です。
下の画像は同じメーカーの、しなやかさを売りにしているフロロとナイロンのティペットです。
同じ4Xのティペットですが、直線強度がフロロ5.3lbに対し、ナイロンが5.9lbとなり、ナイロンの方が強いのがわかります。
フロロは硬い
下の画像は、上画像のナイロンとフロロの張り(硬さ)を比較したものです。
同じ重さのフックを、同じ長さのところで固定しています。
右側のフロロカーボンの方が、張りが強いのがわかると思います。
技術が進歩したとはいえ、しなやかさを追求したフロロであっても、ナイロンのしなやかさを超えることはできないと思います。
フロロは伸びが少ない
フロロのティペットを、ドライフライに使っていた時期がありました。
この時に多かったのが、知らない間にフライがなくなっていることでした。
渓流では、今も昔もよく木や岩に引っ掛けるのですが、ナイロンでは知らない間にフライがなくなっていたことはありません。
フロロは伸びが少ないので、ダメージを受けた上で強く引っ張ると、衝撃を吸収できず簡単に切れてしまうようです。
これは、魚に対するあわせ切れでも同じことが言えます。
フロロの使いどころ
フロロのネガティブな事を書いてきましたが、フロロを全く使わないわけではありません。
次のような場合、フロロカーボンのティペットを使うことがあります。
沈めたい
ウェットフライやストリーマーなど、フライを沈めたい場合にはフロロの高比重が頼りになります。
ウェットもストリーマーも、大きなフライを使うことが多く、フロロのネガティブな部分が気になりません。
低屈折率によるステルス性能
無風、快晴、鏡のようなフラット水面で、極小ミッジを使う時に、ナイロンティペットのギラつきが気になることがあります。
このような場合に、フロロの低屈折率による水中での見えづらさが武器になることがあります。
細かいアクション
ダンベルアイなどのウェイトが付いたフライでボトムを小さくずる引く場合など、細かいアクションをさせたい場合、伸縮性の低いフロロの方がやりやすいです。
中長期の耐久性
短期的にはナイロンの方が強度がありますが、中長期の耐久性はフロロカーボンにかないません。
ナイロンの場合は、開封してしまったら、湿気や高温、紫外線などに注意し、2シーズン以内には使い切ってしまうか、処分した方が無難です。
お奨めのティペットと、周辺アクセサリーです。
下記であれば、性能面では大差ないと思います。
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